うねるような曲線と、量感あふれる男女が描かれた「接吻」は、ピカソが晩年に描いた名作です。ピカソは付き合う女性によって、さまざまに画風が変化してきました。

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ちなみに、「接吻」が描かれた頃、ピカソはジャクリーヌ・ロックという女性と2度目の結婚をしています。ピカソは80歳、ジャクリーヌが34歳という年齢差での結婚でした。

彼女は、ピカソが亡くなるまでずっと側にいて、彼の芸術活動を支え、数多くの作品のモデルも務めています。その数は、400点以上にも及んでおり、ピカソが彼女をどれだけ愛していたかがわかります。

このように、晩年のピカソを生活面、芸術面の両方から支えたジャクリーヌですが、いったいどのような女性だったのでしょうか。

彼女はパリ出身で、幼いころに父親が母の元から去ったため、母子家庭で育ちました。その後、機械工の男性と結婚しますが、この男性とは離婚し、南フランスに引っ越します。

美しい女性ですが、なかなか苦労の人生を歩んでいたようです。

そして、彼女が26歳の時にピカソと出会うのですが、先に惚れたのはピカソだったようです。彼女に熱烈なアプローチをして、とうとう結婚するまでに至ります。

ジャクリーヌは、料理などの家事をこなしつつ、ピカソの友人たちの接待もそつなく行っていました。また、スペイン語での会話もできたため、社交能力も高く、ピカソを満足させていました。

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そんな愛する妻をモデルにして、ピカソの創作活動は勢いを増していきます。「接吻」が描かれた1969年は、この年だけで165点の作品を生み出しました。

ピカソが目指した画風は「子どものように自由奔放な画風」でした。力まず、自由にのびのびと描けるようになることを目的としていたピカソ。

その言葉通り、晩年になるほど絵筆は生き物のようにキャンバスを自由自在に動いていきました。

それは、「接吻」の筆運びをみてもおわかりかと思います。

男性の髭や女性の髪の毛は、植物のようにうねっています。また、二人の厚い肉体は粘土のようにぴったりと密着しています。

画面いっぱいに描かれた情熱的な肉体と対照的に、背景の水色のストライプ模様が全体をひきしめてくれています。

晩年になっても老いを全く感じさせない「接吻」は、若い頃からのテーマとなっている愛と情熱に満ちています。

88歳になっても男女の愛を描ける作家は、おそらくピカソくらいではないでしょうか。ジャクリーヌへの愛があったからこそ描けた作品なのかもしれません。